08.思い出の味

 

家族(兄が2人いるが、歳がおおきく離れているため、”家族旅行” = 両親と私、である)で旅行するときは、決まって交通手段は車だった。

飛行機や新幹線に3人で乗って遠出することは皆無とも言える。
飛行機であれば、大昔の大昔、5歳くらいのころにディズニーランドへ行った記憶が最後ではないか…?

 

たいていは、父の運転、帰りは父が飲んでいるので母の運転で。
熊本で生まれ育ったため、天草という海側のエリアや、大分などがメインだったが、1年に1度宿泊を伴った旅行があるかないか、のペースだったように思う。

 

天草は同じ熊本県内ではあるが、市内である我が家からは2-3時間ほどかかる。
私の中で「ドライブ」「旅行」「サービスエリア」といえばこの天草への道中の思い出がイコールとなっていた。

 

そのサービスエリアでは毎回「焼きちくわ」を食べた。
アツアツの、ぶりぶりした鯛ちくわを食べるのが習慣だったし、「ちくわ食べるか?」「うん」という会話でもってサービスエリアに父は寄っていたので、サービスエリア=ちくわを買う場所、だった。

家でちくわを食べる機会がほぼなかったが、この焼きちくわだけは、長距離ドライブとなれば決まって”食べなきゃならない”モノのひとつだった。

 

大人になって、静岡へ行く機会があり、友人と高速バスを利用した。
上京してから高速バスを使った旅行(日帰り)なんて初めてだったので、途中サービスエリアへ寄るとアナウンスがあったときに「サービスエリア!ということは!焼きちくわが食べれる!」と思考回路が直結して静かに喜んだ。

が、いざかの有名な大きいサービスエリアに着いてみるとこれだけ出店があるのに、焼きちくわ屋は一件もなかった。知人に「焼きちくわ屋、ないね」というと「なにそれ?」と反応され、ここにきてやっと、サービスエリアに焼きちくわ屋があるのは当たり前じゃなかったんだ・・・!と気づいたのであった。

 

 

去年、母と二人で、すこしリッチな旅がしたくて熊本へ帰省がてら天草のわりとよいホテルを予約して旅行した。ペーパードライバーの私は無力なので、母の運転で往復5時間ほど。おつかれ。

生きの道中、母が

 

「ちくわ食べる?」

 

と聞いてきた。
私は、数年、十数年前の思い出と、焼きちくわが全国共通じゃないことにカルチャーショックを受けたあとだった想いとが相まって、少し胸が締め付けられるような感傷的な気持ちになった。思い出の味、両親と私だけに存在する、思い出の”あるある”質問。

 

そうだよね、ドライブしてんだもんね。だったらさぁ、そうだよ、焼きちくわ食べなきゃだよね。そんな気持ちで

 

「うん」

 

と答えた。


寄った「藍の天草村」で名物の焼きちくわを食べた。やっぱり、美味しかった。
天草までの道中だと、別のさびれたサービスエリアにも焼きちくわ屋はある。やっぱり、サービスエリアといえば、焼きちくわだよ!

 

 

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